2025年の校正・推敲方法
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これは 技術書同人誌博覧会 Advent Calendar 2025の15日目の記事です。
何かしらの文章を書いたら、校正や推敲は必要になってくると思います。 私は 技術同人誌を書いていますが、お金をいただいていますし、印刷してしまうと修正ができないので、ブログやチャットより神経を使って校正・推敲作業を行っています。
そんなわけで、2025年時点でどういう風に校正・推敲作業を私が行っているか紹介します。
校正・推敲の流れ
主に、次のような作業をしています。
- 辞典
- AI
- 文章支援ツール
- 人間
辞典
国語辞典
用語に迷ったらまずは辞典を引きます。ネットで調べずまず辞典を引け(専門用語は除く)。
さて、辞典ですが、ご覧のように国語辞典だけでも7冊以上参照しています。 辞典によって定義の違いや、収録用語に差異があるためです。
たとえば「黒船」を引いてみると次のようになります。
- 三省堂国語辞典
- 江戸時代の末、欧米から来た黒塗りの艦船の呼び名。
- 外国からの圧倒的な勢力のたとえ。
- 新明解国語辞典
- 昔 外国から来た、黒塗りの大船。〔狭義では、江戸時代の末、欧米から来航した艦船を指す〕
- 明鏡国語辞典
- 室町時代末期から江戸末期にかけて、欧米から日本へ来航した船舶。幕末には西洋型の艦船全般を指していった。[参考]船体が黒く塗られていたことから。
- 広辞苑
- 室町末期から江戸末期に、欧米諸国から来航した艦船の称。その船体を黒色に塗ってあったからいう。特に、鎖国時代の大型の外国船。
- 黒塗りの椀を酒盃として用いる時の称。
- 大辞泉
- 近世、日本に来た欧米の帆船。船体を黒く塗ってあったところからの称。幕末には西洋型の船舶全般をさして呼んだ。
- 《船の色から》特に、嘉永6年(1853)、日本の開港を求めて相模さがみ国浦賀に来航したペリー提督の率いる米国艦隊のこと。幕府・国民に大きな衝撃を与えた。
- 《2から。比喩的に》国内に大きな衝撃をもたらす、海外からの新しい計画や政策、新製品などをいう。
- 大辞林
- 室町時代以降、欧米諸国から日本に来航した帆船の称。船体が黒塗りだったのでいう。のち、蒸気船を含む大型の外国船の俗称。
- 江戸時代、大名の軍船などに用いた黒漆塗りの船。
- 精選版 日本国語大辞典
- 中世末期から江戸時代にかけて来航した欧州の帆船。船体が黒塗りであったことから明国、安南、シャムなど唐船系の船と区別して呼んだのが始まりで、幕末期、蒸気船を含む西欧諸国の船艦の来航が頻繁になると、それらをも含めて西洋型船全般の俗称として慣用された。
- 特に、嘉永六年(一八五三)に来航して開国をせまった、ペリー率いるアメリカ合衆国の船隊をいう。
- 黒塗りの椀わんを酒の杯として用いるときの称。
黒船は史実なので、どの辞典でも「昔外国から来た黒い船」と解説があります。 しかし、辞典によって定義が違っており、新明解のようにひと言で済ます辞典もあれば、大辞泉のようにペリーまで踏み込んだ辞典もあります。 また、比喩表現を説明している辞典は三省堂と大辞泉になります。
収録用語の違いは、たとえば「リプライ」で引くと三省堂、大辞泉と大辞林で掲載されており、他は非掲載です。
- 三省堂
- 返信。応答。
- 〔ツイッターで〕だれかのツイートに対する返事のツイート。リプ〔俗〕。〔ツイートの最初に「@」がつく〕
- 大辞泉
- 回答。返事。
- 電子メールで、受信したメッセージに対して返信すること。また、返信したメッセージ。
- X(ツイッター)で、@(アットマーク)の後にユーザー名を付与し、特定の相手に返信すること。リプ。
- 大辞林
- 返事。回答。応答。
大辞泉は年3回更新されているので、ちゃんとXですね。
このように、辞典によって性格が大きく違っています。 説明が多いとか収録数が多いと優れている、といったことはないのでご自身の感性に合ったものをお選びください。
よくわからない場合は、新しい言葉に強い三省堂、文化的側面がわかる新明解、言葉の正しい使い方がわかる明鏡の中から1冊選び、 コトバンクでデジタル大辞泉を参照するのがよいと思います。
シソーラス
類語を調べるときに使います。出番は少なめ。
コロケーション辞典
少し特殊な辞典です。 コロケーション、つまり文法的に二つ以上の単語のつながり方が掲載されている辞典です。
たとえば「愛」を引くと、愛「があふれる」、愛「が生まれる」、愛「をあきらめる」、「偽りの」愛、といった感じで前後につながる文章表現がわかります。
単語の前後の文で迷ったとき、他の表現方法を知りたいときに使います。
英語辞典
英和、和英、英英の辞典です。 複数冊あるのは国語辞典と同じ理由から。
どちらかというと、英語の文を読むときに使います。
記者ハンドブック
日本語を書いているときに、漢字とひらがなどちらを使うのか。漢字の場合送り仮名をどうするのか。同音異義語を使い分けるのか。
といったときに参考にするのが、記者ハンドブックです。
共同通信社が出版している本で、もともとは新聞記者やその編集者の指標となるものです。 文章を書く人は持っておくとなにかと役に立ちます。
私はATOKに 共同通信社 記者ハンドブック辞書 第14版 for ATOKを入れて、変換時に確認できるようにしています。
たとえば『インストールに失敗した「とき」』の「とき」を、漢字で書くのかひらがなで書くのか迷うときに引きます。
- 時
- 〔名詞。主に時期・時間・時刻そのものを示すとき〕売り時、書き入れ時、実行の時が来た、梅雨時、時が解決する、時々、時として、時と場合、時ならぬ、時には〔たまには〕、時の権力、時の流れ、時の人、時は金なり、時を待つ、何時=なんどき
- とき
- 〔形式名詞。主に「…の場合」〕行けないときは連絡する、いざというとき、(もしも)帰ってきたときは、事有るとき、困ったときの神頼み、事故が起こったとき、社員を採用するときは、衆院解散のときは、…しようとするとき(に)は、都合の悪いとき
ここから、ひらがなで書いたほうがよさそうと判断できます。
その他、漢字表、数字の書き方、外来語・カタカナ語用例集、表記の統一など、読みやすさの向上に役立ちます。
AI
2025年といえばAIですね! そんなわけで、近年はAIでの校正・推敲フェーズを追加しています。
いろいろ選択肢はありますが、基本的にはなんでもいいと思います。 Claude Codeだとファイルを横断して解釈、編集してくれるのでおすすめ(MAXプラン必須)。
主に、次のような用途で使っています。 いずれも、してほしいことに合わせてプロンプト調整をしています。
- 誤字脱字の検出
- 表記ゆれの検出
- 表現のリライト
- 文章量の調整
- 構成の調整
- 品質チェック
文章の流れや、重複した表現、わかりづらい説明、不足している説明、説明そのものの誤り、誤解を与える表現の確認などをしています。 特に文章全体を見て、不自然な文章をチェックできる点が優れています。
ここからは、次のテスト文章をもとにチェックします(テスト文章はある程度エラーがでるように書いたもので、内容に意味はありません)。
こんにちわ。
仮想環境のシュミレーションを行い、安全なコンテナの運用について解説致します。
本章の目的は、基礎を理解し、実際に環境を構築だ。
一番最初に、概念を理解する事が必ず必要になります。
これは、アプリの実行環境をパッケージ化を行う技術です。
このツールの最大の特徴は、誰でも簡単に操作が可能です。
今の現状、最も普及しているのはDockerです。
公式Webサイトからダウンロードを行うことが可能となります。
ウェブサイトからダウンロード後、インストール行うことができます。
もし起動しない場合は、赤いエラーの画面の文字をちゃんと確認してください。
エラー分から重要な情報を得れます。
Claudeでのチェック結果は次のとおりです。
> 次の文章の誤字や脱字、不自然な表現、表記の揺れなどを校正してください。
> (テスト文章)
## 校正箇所
- こんにちわ → こんにちは(誤字)
- シュミレーション → シミュレーション(誤字)
- 解説致します → 解説いたします(補助動詞はひらがなが一般的)
- 環境を構築だ → 環境を構築することです(文法的に不完全)
- 一番最初に → 最初に(重言)
- 理解する事が → 理解することが(形式名詞はひらがなが一般的)
- 必ず必要 → 必要(重言)
- パッケージ化を行う → パッケージ化する(不自然な表現・「を」が余分)
- 最大の特徴は、…操作が可能です → 最大の特徴は、…操作できることです(ねじれ文)
- 今の現状 → 現状(重言)
- ダウンロードを行うことが可能となります → ダウンロードできます(冗長表現)
- インストール行う → インストールを行う(脱字・「を」の欠落)
- Webサイト/ウェブサイト → どちらかに統一(表記の揺れ)
- ちゃんと確認 → よく確認(文体の統一・やや口語的)
- エラー分から → エラー文から(誤字)
- 得れます → 得られます(ら抜き言葉)
> 説明がわかりづらい点はありますか
## 指示語の先行詞が不明確
- 「これは、アプリの実行環境を…」の「これ」が何を指すのか不明です。コンテナ技術のことだと推測できますが、直前に明示されていません。
- 「このツールの最大の特徴は…」の「このツール」も同様に、何を指すのか曖昧です。
## 用語の説明不足
- 「概念を理解することが必要」とありますが、何の概念なのか示されていません。
- 「基礎を理解し」の「基礎」も同様です。
## 文章の繋がりが不自然
- 「仮想環境のシミュレーション」と「コンテナの運用」の関係が唐突で、両者がどう関連するのか説明がありません。
- 「現状、最も普及しているのはDocker」とありますが、何と比較して普及しているのか(他のコンテナ技術との比較なのか)が不明です。
## 省略されている情報
- 「公式Webサイトからダウンロードできます」は、Dockerの公式サイトを指すと思われますが、明示されていません。
かなりいい感じに検出してくれています。 特に「エラー分」の誤字はAIだけ検出できました。
また、文章周りでもいい感じに問題点を指摘しています。
いずれにしても、AIの出力した文章は、誤っている可能性があるので内容はつど確認しています。 また、1回チェックしただけではすべて拾いきれないので、何回か同じ内容で回しています。
文章支援ツール
- 文賢(2,178円/30日)
- Just Right!7 Pro(51,700円/買い切り)
どちらも有料です。お金がかかりますね!
二つ使っているのは、どちらも微妙に守備範囲が違うからです。
文賢→Just Right!の順でチェックしています。
文賢
どちらかというと、推敲に特化しているのが文賢。 文章を整えるだけでなくよりよい文章にすることまでカバーしてくれます。
料金は30日2,178円。 30日単位で契約できるので、必要になったときだけ使えます。
ウェブ上で使えるので、プラットフォームも選びません。
取りあえず導入するならこちら。
テスト文章の指摘は次のとおり。
話し言葉、ひらがなで書いたほうがいい単語、助詞の連続などが15項目検出できています。 読みやすい文章にするための指摘が、他と比べて多めです。
一方、文体の変化や「Web」と「ウェブ」の表記ゆれ(検出できるときもあります…)、などは検出できませんでした。
Just Right!7 Pro
どちらかというと、校正に特化しているのがJust Right!。 表記ゆれや文法の乱れなど、文章の正確性を追求できます。
料金は51,700円の買い切り。 Windowsだけのインストールタイプです。
私は追加で「共同通信社 記者ハンドブック校正辞書 第14版 for Just Right!(19,800円)」を入れています。
また、デフォルトではやや指摘が弱いので、一般財団法人テクニカルコミュニケーター協会の 日本語スタイルガイド第3版対応ATOK・JustRight!データ集も、追加で入れておくといいかもしれません(このあとのテストでは入れていません)。
もしATOKを契約している場合は、簡易版の ATOKクラウドチェッカーがウェブ上で使えます。
全体的に文体の変化や、修飾関係のあいまいさなど15項目検出できています。 「赤いエラーの画面の文字」の修飾関係のあいまいさは、Just Right!だけ検出できました。
また、修正候補もでてきます。 特に「行うことができます」は「行えます」とかなりバッサリな候補になっています。
一方、表現周りでは回りくどい表現程度で、話し言葉やひらがなで書いたほうがいい単語は検出されません。
細かい調整ができないことに目をつむれば、普段使いでは十分だと思います。
各ツールの指摘まとめ
| 対象 | 理由 | ChatGPT 5.2 Thinking | Claude Opus 4.5 | Gemini 3 Pro | 文賢 | Just Right! |
|---|---|---|---|---|---|---|
| こんにちわ | 仮名遣い | O | O | O | O | O |
| シュミレーション | 誤字 | O | O | O | O | O |
| 致します | ひらがなで記述 | O | O | O | O | |
| 構築だ | 文体の変化 | O | O | O | O | |
| 一番最初 | 重複 | O | O | O | O | O |
| する事 | ひらがなで記述 | O | O | O | O | O |
| 必ず必要 | 重複 | O | O | O | O | |
| 実行環境をパッケージ化を | 同じ助詞の連続 | O | O | O | O | O |
| 最大の特徴は、誰でも簡単に操作が可能です | ねじれ文 | O | O | O | ||
| 今の現状 | 重複 | O | O | O | O | |
| インストール行う | 脱字 | O | O | O | O | |
| 行うことができます | 冗長 | O | O | O | O | O |
| 赤いエラーの画面の文字 | 修飾関係があいまい | O | O | |||
| ちゃんと | 話し言葉 | O | O | O | ||
| してください | 使い方に注意が必要 | O | ||||
| エラー分から | 誤字 | O | O | O | ||
| 得れます | ら抜き言葉 | O | O | O | O | O |
| Webサイト/ウェブサイト | 表記ゆれ | O | O | O | O | |
| 事/こと | 表記ゆれ | O | O | O | O | O |
人間
結局最後は人間が見る。 ここまでやってもすり抜けるときはすり抜ける…。
人間→AI→文賢→Just Right!→人間→AI…とループしています。
正しい文章を書くのは大変
以上が、2025年時点で私がやっている校正・推敲の流れです。
一回で完璧な校正・推敲ができるツールはありません。 AIの鋭い指摘が選択肢に加わり、今まで気づけなかった箇所に気づけるようになったのが2025年だったかなと思います。
校正・推敲は誤字脱字をつぶすだけではなく、この文章を出しても大丈夫と自分が思えるところまで品質を上げる工程だと思います。
気になったツールがあればぜひ取り入れてみてください。






